
緑内障は、目の中の圧力である眼圧による影響で視神経が障害を受けることで、視野がだんだん狭くなったり、見えにくくなったりする病気です。進行すると失明することもあり、日本では中途失明の原因として最も多い病気です。
点眼薬やレーザーで進行を抑えるのが一般的ですが、状態によっては手術が必要になることもあります。緑内障の手術をしても緑内障を治すことはできません。あくまでも進行を抑えるための手術になります。
しかし、「手術にはどんなデメリットがあるの?」「本当に必要なの?」と不安を感じる方も多いのではないでしょうか。本記事では、緑内障手術のメリット・デメリットや手術の種類について解説します。
手術で緑内障は治る?
緑内障は、手術によって治る病気ではありません。視神経が一度傷つくと元に戻らないため、手術は、あくまで進行を抑えるための手段です。
手術では、なんらかの手段で眼圧を下げ、視神経へダメージを与えにくくします。それにより、視野欠損がこれ以上悪化しないようにすることが目的です。中には「せっかく手術をするのだから、劇的に回復するのでは?」と期待される方もいらっしゃるかもしれませんが、すでに失われた視野や視力を取り戻すことはできません。
基本的には点眼やレーザーでは進行を抑えきれない場合や、アレルギーなどによって点眼が使用できない場合に緑内障の手術が選択されることになります。
緑内障の原因
緑内障の原因は、大きく2つに分けられます。
1つ目は、房水(ぼうすい)の流れが悪くなることです。房水とは、目の中を循環する透明な液体で、常に作られ、最終的には血液中に吸収されていきます。この房水の出口が詰まったり流れが悪くなると、眼圧が上がり、視神経にダメージが加わってしまいます。
2つ目は、視神経がもともと弱いタイプです。 眼圧が正常でも、視神経が圧力に弱い人は、ダメージを受けて緑内障を発症することがあります。これは「正常眼圧緑内障」と呼ばれ、日本人に多く見られます。
さらに、加齢(特に40歳以上)や遺伝、近視なども発症のリスクとなります。初期にはほとんど自覚症状がないため、定期的な検査での早期発見が視力を守るポイントです。
緑内障手術のメリット
緑内障手術の最大の目的は、眼圧を下げて視神経がこれ以上ダメージを受けないようにすることです。点眼薬やレーザー治療で十分な効果が得られない場合や、病状が進行している場合に選択されます。ここでは、緑内障手術の主なメリットをご紹介します。
1.眼圧を下げられる
緑内障手術では、房水の流れを改善したり、房水を外に流すようにすることで眼圧を効果的に下げることができます。点眼薬やレーザーで効果が不十分な場合でも、手術で眼圧が安定すれば、視神経への負担が減り、病気の進行を抑えることができます。
2.視力を維持できる
緑内障は視野が徐々に欠けていく病気ですが、進行が止まれば今ある視力や視野を保つことができます。これは日常生活を送るうえで大きなメリットです。視野が広がるわけではありませんが、特に中心部分がしっかり保たれていれば生活には大きな問題が生じないことも多いので、それが達成できるのであれば手術の意味は大きいです。
3.点眼薬の負担が軽減される
点眼薬が効かなくなったり、アレルギー症状がでたり、毎日の使用が負担に感じている方にとって、手術はストレスを軽減する手段になります。術後に点眼薬の量が減ったり、場合によっては不要になることもあり、わずらわしい毎日の点眼から解放されて喜ばれる患者様も多いです。
点眼の管理が難しいご高齢の方や、点眼薬によるアレルギーや副作用でお悩みの方にとっても、手術は選択肢の一つとなります。この場合は特にリスクが少ないタイプの手術がまずは選択されることになります。
4. 長期的な眼圧管理がしやすい
点眼薬やレーザー治療と比べて、手術の方が眼圧を長期間コントロールしやすいというデータもあります。定期的な通院は必要ですが、安定性の高さは手術の強みです。
緑内障手術のデメリット
緑内障手術は、眼圧を下げて病気の進行を防ぐための有効な治療法ですが、いくつか注意しておきたいデメリットもあります。ここでは代表的なリスクや手術後の注意点について解説します。
1.感染症・合併症のリスクがある
緑内障手術では、目の中での操作が必要なので器具の入り口としての創口が必要になります。また緑内障手術の種類によっては目の中から房水を外に出すための経路を作成する場合もあります。
そのため、そこから細菌が入り込み、眼内炎などの炎症・感染症を起こすことがあります。感染が起きた場合は、抗生剤の使用や、必要に応じて再手術が行われることもあります。こうしたリスクを防ぐには、手術の前後に処方された目薬を、決められた通りに使うことがとても大切です。
また、出血や炎症により眼圧が一時的に高くなることがあります。その場合は、薬や処置を行いながら慎重に経過を観察します。一方、眼圧が下がりすぎて見えにくさを感じることもありますが、多くは時間とともに改善します。ただし、再縫合などの処置が必要になるケースもあります。
2.手術直後は日常生活に制限がかかる
手術のあとは、目がとてもデリケートな状態になります。
そのため、目をこすらない・押さえない・強い刺激を与えないことが大切です。無意識にこすってしまったり、うつ伏せで寝てしまうと、眼圧や傷口に影響が出ることがあります。
寝るときは仰向けで、保護メガネをつけてお休みください。また、感染予防のため、洗顔や洗髪は数日間控えていただき、プールや温泉なども1ヶ月ほど避けていただくのが安心です。さらに、スマホやパソコンの長時間使用もまばたきが減ってしまうため涙の状態がわるくなり感染の原因となりますので注意が必要です。
制限の内容や期間は、手術の種類や目の状態により異なります。不安なことがあれば、術前術後の検診で確認しながら、無理のないように生活を整えていきましょう。
緑内障手術の種類
緑内障手術にはいくつかの種類があり、眼の状態や進行度によって適した方法が選ばれます。それぞれの手術には特徴やメリット・デメリットがありますので、主なものをご紹介します。
1.レーザー手術(SLTなど)
点眼薬で副作用が強く出たり、眼圧のコントロールが難しい場合などに行われる治療です。低出力のレーザーで線維柱帯を照射し、房水の排出を活性化したり、目詰まりを解消したりして、眼圧の低下をはかります。
治療は3分程度で終わり、痛みも副作用もほとんどない安全な治療です。初期の緑内障や毎日の点眼が難しい高齢者の方にとって有効な選択肢となります。
2.線維柱帯切開術(トラベクロトミー)
房水がスムーズに流れるように、出口部分にある「線維柱帯」という場所を切り開く方法です。出口の通り道が広がることで眼圧を自然に下げることができます。感染症などのリスクが比較的少なく、安全性の高い治療法とされています。
白内障の手術と同時に行える手術でもあり、眼への負担を軽くしながら効果的に治療ができる点もメリットです。点眼薬やレーザー治療だけでは眼圧が下がり切らない場合や、緑内障と白内障が両方ある場合で、白内障手術を受ける場合は同時にこの手術を同時に行うことがあります。
3.低侵襲緑内障手術(MIGS)
MIGSにはさまざまな手法があり、代表的なものに、iStent(アイステント)やKDB(カフークデュアルブレード)などがあります。いずれも傷が小さく、体への負担が少ない手術法です。術後の回復が早く、早期に社会復帰しやすいことが特徴です。
基本的に前述のトラベクロトミーを特殊な器具を用いて行う手術だと理解いただければ概ね間違いはありません。ただし、眼圧を大きく下げたい場合には効果が不十分なこともあります。
4.線維柱帯切除術(トラベクレクトミー)
目の表面にある白目の部分を少しだけ切り開き、房水が自然に外に出ていく新しい通り道をつくることで、眼圧を下げます。最も眼圧を下げる効果が高い手術で、中〜重度の緑内障の方に向いています。ただし、目の中に細菌が入るリスクや、眼圧が下がりすぎる、白内障が進行しやすくなるなどの合併症が起こる可能性もありますので、術後のケアがとても重要です。リスクは大きいですが、眼圧はかなりしっかり下がる手術、という位置付けです。
5.その他の種類
上記以外にも、チューブシャント手術(房水を外に逃がす装置を挿入)などがあります。これらは前述のトレベクレクトミー類似の手術で、これらを専用のデバイスを用いて行うようなイメージの手術です。
近年では安全性の大きく向上したプリザーフロと呼ばれる器具を使ったものが普及してきています。
手術方法は、病状・年齢・生活スタイル・合併症の有無などを総合的に判断して選択されます。それぞれの手術に利点とリスクがあるため、医師との十分な相談のもと、最適な方法を決めることが大切です。
緑内障手術の流れ
ももの木眼科ではレーザー手術(SLT)や、白内障手術と同時に行う線維柱帯切開術(トラベクロトミー)のみ行っており、他の手術をご希望の場合は適宜、連携先の病院をご紹介いたします。レーザー手術はほとんどリスクがなく、術前の準備や術後の制限がないため、希望があれば即日実施できる安全な治療です。
トラベクロトミーに間しては白内障と同時に行うことが多いですが、ももの木眼科では、術前検査 → 手術 → 術後の経過観察の流れで進みます。術前検査では視力・眼圧・視野・眼底など詳しい検査を行います。医師が緑内障の進行状況や手術の方法・注意点について丁寧にご説明し、ご納得いただいた上で日程を決定します。
手術は点眼麻酔や笑気麻酔で痛みをやわらげながら進め、症状に応じた方法で行います。手術中は麻酔が効いているため、痛みはほとんどなく、入院は不要です。手術翌日、状態を確認するための診察を行います。その後も定期的な通院を通して、大切な目を守り続けていけるようサポートいたしますので、どうぞご安心ください。
緑内障手術のデメリットにご不安のある方は、京都市伏見区のももの木眼科にご相談ください

緑内障手術にはメリット・デメリットの両方がありますが、種類も多く不安を感じる方が多いです。特に、感染症や術後の生活制限など、デメリットについてしっかり理解してから手術に臨むことが大切です。京都市伏見区にあるももの木眼科では、緑内障の専門的な診断と治療を行っており、お一人おひとりの状態に合わせた最適な治療法の提案を心がけています。
手術が必要な場合は患者さんにとって最適な手術が手術が選べるよう、医師・スタッフが丁寧にサポートいたしますので、緑内障手術についてのご不安がある方は、京都市伏見区のももの木眼科にご相談ください。LINEでの簡単予約もご利用いただけます。お気軽にお問い合わせください。