
近視や乱視を根本から矯正し、メガネやコンタクトから解放されるICL手術が近年普及してきています。しかし自由診療のため手術費用は全額自己負担となり、「できるだけ支出を抑えたい」「生命保険の手術給付金は利用できる?」と疑問を抱く方も多いでしょう。
結論から言えば、ICL手術はほとんどの生命保険契約で手術給付金の対象にはなりません。公的医療保険が適用されないのはもちろん、手術給付金の支払い要件に含まれる「病気やけがの治療目的」には該当しないためです。ただし、確定申告で利用できる医療費控除の対象にはなりますので、支払った医療費の一部を所得控除として申請し、税負担を軽減することは出来ます。
本記事では、「生命保険の手術給付金」をめぐる基本知識に加え、医療費控除の活用法や申請方法をわかりやすく解説します。
ICL手術は保険適用外
ICL手術は、近視や乱視を矯正して裸眼視力を回復させる「屈折矯正手術」に分類されます。日本の健康保険は、病気やけがの治療に必要と認められる医療行為を対象とし、日常生活に支障をきたす疾患の診療費を一部負担する仕組みです。
一方で屈折矯正手術は「視力矯正を目的とした自由診療」であり、あくまで患者さまの希望による選択的な治療と位置づけられています。そのため、医薬品・治療法の公的保険適用基準に該当せず、治療は全額自己負担となります。ICLで使用する専用レンズや手術機材は、保険診療報酬の枠外にあるため、医療機関が保険請求を行うこともできません。
ご希望の方は手術費・検査費ともに全額自己負担となりますので、あらかじめご理解のうえご検討ください。
民間の生命保険によってはICLの手術給付金の対象になる場合もある
ICL手術は保険適用外ですが、生命保険契約によってはまれに「手術給付金」の支給対象となる場合があります。以下では、その対象となるケースと、申請方法・必要書類についてご説明します。
手術給付金の対象となるケース
生命保険の手術給付金は、被保険者が病気やけがで所定の手術を受けた際に、あらかじめ契約で定められた金額を受け取れる保障です。ICL手術は「視力矯正のための手術」として自由診療扱いですが、「眼科系手術」には該当します。
・給付対象の要件
契約中であること──ICL手術を受けるタイミングで保険が有効である必要があります。
待機期間の経過──入院給付金と同様に、契約から90日(保険会社による)以上の「待機期間」を満了していること。
指定手術に含まれること──保険約款に「屈折矯正手術」や「眼内レンズ挿入術」が明記されている。「眼科手術全般」に含まれている場合もあります。
手術給付金の申請方法・必要書類
・給付金請求書の取得・記入
加入先保険会社へ連絡し、手術給付金請求書を取り寄せます。請求書には被保険者氏名・契約番号・手術名・実施日などを記入します。
・医師の診断書・手術証明書
手術を実施した医療機関に依頼し、「手術証明書」または「診断書」を発行してもらいます。書式は保険会社指定のものが望ましいです。
・申請のタイミング
手術日から3ヵ月以内を目安に請求するようにしてください。多くの保険会社では、手術日から3ヵ月以内の申請を推奨しています。
・給付金額の確認
契約時に「手術給付金額」を確認しておくことで、実際に受け取れる金額を知ることができます。
・保険会社への相談
申請前に必ずコールセンターへ問い合わせ、「自分の契約でICL手術が対象になるか」「必要書類に不足はないか」を確認してください。
ICL手術は医療費控除の対象
医療費控除の申請方法・必要書類
ICL手術は保険適用外で自由診療となりますが、医療費控除の対象にはなります。ご本人や生計を一にする配偶者・親族のために支払ったICL手術費用も、確定申告で所得から差し引くことができます。補助が出るわけではありませんが、医療費控除によって納める税金が少なくて済む可能性があります。
【控除額の計算】
総医療費(ICL手術費用+通院費など)-保険金等で補填された金額-10万円(総所得金額が200万円未満の場合は総所得金額×5%)=医療費控除額
という計算方法になります。
【申請方法】
1.確定申告書(AまたはB)を用意し、「医療費控除」の欄に必要事項を記入
2.平成29年分以降は「医療費控除の明細書」を添付(領収書の代わりに提出可能)
3.税務署窓口へ持参、郵送、またはe-Taxで申請
【必要書類】
・ICL手術の領収書(医療機関名・手術名・金額・支払日)
・医療費控除の明細書(国税庁様式)
・保険金等受領額がわかる証明書(給付金明細書など)
・マイナンバー確認書類・本人確認書類
領収書は5年間の保存義務があります。提出は明細書で代替できますが、申告後も大切に保管してください。
ICL手術は先進医療の対象ではない
ICL手術は屈折矯正目的の自由診療として、先進医療技術には指定されていません。 先進医療指定を受けるには、その技術が「標準医療を超える新規性・安全性・実施体制」を備え、かつ「保険診療と組み合わせて料金負担を抑えつつエビデンスを集積する」仕組みに合致する必要があります。
ICLは既に国内外で広く普及し保険外自由診療として確立しているため、先進医療の適用対象にはなっていません。
先進医療の概要
先進医療とは、厚生労働省が「安全性と有効性は一定のエビデンスが得られているが、まだ標準的な保険医療としては位置づけられていない」と認定した高度医療技術を指します。先進医療を提供できる施設であれば、該当する手術や検査の実施費用は全額自己負担(保険外診療)となる一方で、その前後の通常検査・診察は公的医療保険が適用され、患者様の自己負担割合(1~3割)で受けられます。
先進医療実施施設に指定されるには「技術内容の評価」「十分な実施施設数」「倫理委員会承認」「定期報告による実績管理」など厳しい要件があります。年度ごとに先進医療会議で審査・更新が行われ、承認技術一覧として厚労省ホームページで公表されます。
先進医療に適用される目の治療方法
以前は多焦点レンズを用いた白内障手術に先進医療が適用されていましたが、現在は適用から外れています。現在眼科領域で先進医療が適用されるのは難治性の角膜疾患に対する羊膜移植術や、特定の疾患の原因ウイルスや、細菌性・真菌性眼内炎や角膜潰瘍の原因菌を素早く特定し、迅速な抗菌・抗真菌治療の選択するためのPCR検査などに限られます。
ICL手術の相場
ICL手術の費用相場は、両眼で概ね60万~70万円前後が目安です。内訳は、レンズ代、手術技術料、術前・術後検査料、点眼薬代などが含まれます。両眼で40万円程度〜という広告が出ていることがありますが、こういった場合は国内未承認のレンズを使用していたり、実際に受診するとオプションで色々と料金が追加されて高額になるケースがあるのでご注意ください。
自由診療のため医療保険は適用されませんが、医療ローンや分割払いが使える施設もあります。また、例えば1日使い捨てコンタクトレンズを10年間使用し続けた場合、トータルコストはICL手術と同等かそれ以上になるケースが多く、長期的には経済的メリットも期待できます。
費用以外でICL手術の医院を選ぶ方法
ICLは高度な技術を要する自由診療です。費用はもちろん大事ですが、それ以上に「信頼できる医師」「万全のアフターケア」「納得できる説明」の3点をしっかり確認することで、安全性と満足度を両立することができます。
執刀医の経験・実績
・ICL認定医かどうか
スター社によるICL認定制度をクリアした医師は、厳しい基準をクリアした医師です。「ICL認定施設・認定医」であるかどうかは、まず最初に確認しましょう。また手術執刀医と術後診察を行う医師が同じであるかどうかも重要です。
・白内障手術実績の豊富さ
ICLは白内障手術とほぼ同じ手技を用いるため、白内障執刀症例が多いほど安全性が高まります。クリニックの年間手術数をチェックすると、技術レベルを推しはかることができます。
・設備の充実度
CASIA2などの前眼部OCT、VERION(ベリオン)による乱視軸表示装置など、最新の術前検査・術中ガイダンス機器を備えているかも安全で質の高い手術には非常に重要です。ももの木眼科ではこれらを導入し、正確なレンズ選定・位置決めに役立てています。
手術後のアフターケアや保証
・定期検診の体制
翌日・3日目・10日目・1ヶ月後は最低限の受診が必要で、以後も状態に応じた適切なフォローアップを受けられるかを確認しましょう。
・緊急連絡先の明示・休日の対応
術後の眼圧上昇や感染症は早期に対応できれば大事にはいたらないケースがほとんどです。LINEなどで緊急の連絡がとれて、日曜日や祝日でも診療をしている施設がより望ましいです。
・保証制度
度数ズレや乱視軸ズレが生じた場合の再手術保証の有無、保証期間や自己負担額の上限などを事前に確認しましょう。ももの木眼科では、乱視の修正は追加費用なしで行っており、レンズの入れ替え(滅多にありませんが)に対してはICLのレンズ代のみを負担していただいています。
カウンセリング時の対応
・見え方の希望を丁寧にヒアリング
「できるだけ遠くがよく見えたい」「パソコン作業を多用するからほどほどに」など、ライフスタイルに応じた度数選定に対応してもらえるかどうかは重要です。
・メリット・デメリットの両面説明
手術のメリットだけでなく、ハロー・グレア現象や老眼との関係、感染リスクなども正直に情報提供してくれるかどうかが判断基準になります。
・WEB相談会・資料提供
通院前にオンラインで概要説明を受けられるかもポイントです。遠方から手術を受けに来られる患者様もおられるので、ももの木眼科では自宅から参加できるICL WEB相談会を実施し、ご不安を解消しています。
ICL手術に関してご不安がある方は、京都市伏見区のももの木眼科にご相談ください

ICL手術は自由診療のため、費用面や少しでも費用を補助してくれる民間の保険の対象になるかなどを知りたいというのを気にされる方が多いです。費用面も重要なことですが、大切な目のことなので「納得できる説明」「安全性の高い環境」「信頼できる技術」こそがクリニック選びのポイントとなります。
京都市伏見区のももの木眼科では、ICL手術のメリット・デメリット、それぞれの患者さんに対応した説明をさせていただきますし、WEB相談会での気軽なお問い合わせ窓口をご用意し、術前検査から術後フォローまで一貫してサポートいたします。ICL手術について少しでもご不安や疑問があれば、ぜひ一度ももの木眼科へご相談ください。