
ICLは、従来の角膜を削るレーシックとは異なり、“可逆性”を備えた視力矯正法として注目を集めています。「コラマー」という柔軟かつ生体適合性の高い素材で作られたレンズを折りたたんで小切開から挿入します。
虹彩裏にフックで掛けるだけの非癒着構造により、角膜を削らずに近視・乱視を高精度に矯正します。ICLはレンズ交換・摘出が可能で、将来の度数変化や白内障手術、万一の合併症にも対応できるのが大きな強みです。
この記事では、「ICLはなぜ一度入れても交換できるのか」という仕組みと、実際に交換が必要となる代表的なケースを詳しくご紹介。術後の視力不安を解消し、将来にわたり安心して快適な裸眼視力を維持するためのポイントをわかりやすく解説します。
ICLはレンズ交換ができる
ICLは一旦手術で眼内に固定したあとでも、交換することができます。それは以下のICLの特性によるものです。
1.可塑性の高い素材
ICLは「コラマー」という生体適合性に優れた非常に柔らかい素材でできており、折りたたみ・展開を繰り返しても形状が変わりません。ゆえに挿入するときは小さく畳んで入れられますし、摘出するときも柔軟に形が変わり、無理なく引き抜くことができます。摘出時も挿入時と同じ3mmの傷口から、レンズを引き抜くことができます。
2.固定したあとに癒着が起こらない
レンズは糸やセメントで固着せず、端部のフックを虹彩の下に入れるだけの構造です。強固な癒着が起こらず、取り出す場合にも眼内の組織を傷めることがありません。
ICLのレンズ交換が必要なケース
ICLは一度挿入しても取り外せる「可逆性」を備えています。とはいえレンズの取り外しが必要になるケースはあまり多くありませんのでご安心ください。以下に取り外しが必要になるものを解説させていただきます。
レンズサイズ不適合の場合
術前検査でICLの最適なサイズを選びますが、レンズが大きすぎたり小さすぎたりすると、虹彩への接触や眼圧上昇を招きます。こうした場合は、適切なサイズのレンズへ交換する必要があります。ただし、CASIA2という最新の前眼部OCTを使用して術前検査を行った婆はレンズサイズの不適合による交換はまずありません。
度数ズレの場合
術前の屈折検査で決定した度数でも、ごくわずかに「低矯正(度数が弱い)」や「過矯正(度数が強すぎる)」になることがあります。低矯正で視力が上がらない、あるいは過矯正で眼精疲労や頭痛を招く場合は、適正度数のレンズに入れ替えて視力を再調整します。レンズ交換が必要になるほどの度数ズレは最新の検査機器、国家資格を持つ視能訓練士による視力検査を行った場合にはまず起こりません。
レンズの位置がズレてしまった場合
乱視ICLは決められた軸に沿って固定します。手術後に乱視用ICLが回転すると見えにくくなるので向きを矯正する必要があります。この場合は入れ替え手術は必要なく、向きを修正するだけでよいです。ただし、目の形の問題などで何度も回転をくり返す特殊例では、レンズ自体を交換して固定方向を変更・最適化することがあります。
視力に変化があった場合
術後も微量ながら近視が進行するケースがあります。進行幅が大きいと再矯正が必要となり、より強度の度数を持つレンズへの交換で裸眼視力を維持します。特に20代前半の方は、ICL手術後も近視が進むことがあるので、その分を計算に入れてレンズの度数を選択するのがよいでしょう。
白内障手術が必要になった場合
加齢や術後経過で白内障が生じた場合、白内障手術の際にICLを一旦摘出し、水晶体を眼内レンズへ入れ替えます。ICLレンズの摘出は特に難しいものではないので、取り出すのは容易です。ICLは摘出されてなくなりますが、かわりに白内障手術で使用する眼内レンズが入るので近視に戻ることはなく、使用する眼内レンズによっては老眼が治ることもあります。
目の病気を発症してしまった場合
発生率は0.0167%と極めて低いものの、術後に眼内炎を起こした場合は、まずICLを全摘出して抗菌治療を行います。感染が制御できた後、再度適応検査をして安全なレンズを挿入する再手術を検討します。
ICLのレンズ交換が必要となる期間の目安
ICLは、一度挿入すればレンズ寿命による交換が原則不要な視力矯正法です。その秘密は、50年以上機能を維持するといわれる「コラマー素材」と高い生体適合性にあります。経年劣化や曇りを心配される方がおられますが、ICLは角膜を削らずに虹彩と水晶体の間に柔軟にフィットし、紫外線や細菌によるダメージにも強く、変形や黄変がほとんど起こりません。
術前に度数やレンズサイズを精密に決めるため、度数ズレによる交換も稀で、万が一白内障手術で眼内レンズを入れ替える際にも、ICLは一度取り出しますが、これはICLレンズの劣化により取り出すわけではなく、白内障手術後はICLレンズが必要なくなるためです。基本的にはICLは一度入れたらずっと使い続けられると考えていただいてよいでしょう。
ICLのレンズ交換を行う流れ
ICLレンズ交換は、初回挿入と同じく小切開で行えますが、レンズを取り出すという操作が加わる分、通常のICL手術よりの工程が少し多くなります。おおまかな流れは以下の通りです。
1.術前検査
まず外来で必要な検査(視力・屈折・前房深度など)を再度確認し、交換用レンズの度数・サイズを確定します。
2.小切開の作成
1度目の手術のときに作成した3mm程度の傷口をメスを用いて開きます。
3.レンズの摘出
ICLレンズを虹彩の上に出して、専用器具で把持しICLレンズを引き抜きます。レンズ周囲に癒着は起こらないため、容易に摘出可能です。
4.交換レンズの挿入
新しいICLレンズも折りたたんだ状態で挿入し、目の中でゆっくり展開・固定します。
5.前房内の洗浄
ヒアルロン酸などの粘弾性物質を吸引し、目の中を洗浄します。
6.創口の閉鎖と点眼
切開部は自己閉鎖力で縫合不要。再度消毒・抗菌・抗炎症点眼を行い、手術は終了です。
ICLのレンズ交換に関する注意点
ICLレンズ交換後の術後管理は、初回挿入手術と同様に「創部の安定」「感染予防」「視機能の安定化」を最優先に行います。以下の5つのポイントを守ることで、安全かつ快適に回復期間を過ごせます。
スマホ・パソコンは最低1日は控える
レンズ交換直後は目の中に小さな切開創があり、前房内の炎症が出ている状態です。スマホやパソコンなどの近くを見る作業をすると茶色目の部分が刺激されて、痛みが出る場合があります。手術当日は瞳孔が開いている状態になるので、近くは特に見えにくいです。
またスマホやパソコンの長時間使用は瞬きが減って涙液の膜が乱れ、創部の乾燥や炎症を招きやすくなります。術後1日目まではできるだけ画面から目を離し、スマホやパソコンは最低限必要なことだけの使用にとどめましょう。翌日以降も、1週間程度は適宜休憩を入れて酷使しないようにしましょう。
運転は医師の許可が出るまで中止
交換後の視力確認と眼圧チェックは非常に重要です。手術翌日には必ずクリニックを受診し、医師から「運転してよい」との許可が出るまでは運転を自粛してください。視力が安定しない状態での運転は、自分だけでなく他者にも危険を及ぼします。
公共交通機関やタクシー、家族や友人の送迎を利用し、万全の体制でフォローを受けましょう。とはいえ、多くの場合には手術翌日には十分な視力が出ているので、翌日受診後には運転ができることが多いです。
メイクは1週間程度控える
手術後1週間は、アイシャドウ・マスカラなど目元の化粧を避けてください。化粧品の微細な粉末や繊維が創部に付着すると、細菌感染や炎症のリスクが高まります。目を避けてのメイクは術後3日でしていただいてよいです。1週間後以降も目元のメイクはマスカラなどは特にひかえめにするようにしてください。化粧落としによる摩擦も創部への刺激となるため、術後1ヶ月はクレンジングの際も優しく行いましょう。
入浴は1週間程度注意が必要
顔全体を濡らすこと自体は許可されますが、熱い湯気や強いシャワーは眼圧を一時的に上昇させ、切開創や房水循環に影響を与える恐れがあります。入浴は術後3日目以降とし、ぬるめのシャワーで顔を洗うにとどめてください。湯船に浸かる場合は創部が湯に直接触れないように顔を避け、1週間ほどは短時間の入浴で済ませることをおすすめします。入浴後は速やかに抗菌・抗炎症点眼を行い、保護メガネを装着してください。
激しい運動は1ヶ月程度控える
ランニング、ジムでの筋トレ、球技や格闘技など心拍数や眼圧が大きく変動する運動は、切開創やレンズ固定に予期せぬ負荷をかける可能性があります。特に頭部や顔面への衝撃は、乱視用レンズの軸ズレを招き、見え方が悪化する原因にもなり得ます。術後1ヶ月程度はウォーキングや軽いストレッチにとどめ、クリニックでの検査・診察で問題がなければ徐々に運動強度を上げていくようにしてください。
共通の注意点として、術後1ヶ月程度は医師指示の抗菌・抗炎症点眼を徹底し、保護メガネまたはアイシールドを外出時や就寝時に装用して創部の汚染や摩擦を防ぎます。また、翌日・3日後・10日後・1ヶ月後の定期検診を必ず受け、眼圧や視力、創部の経過を確認し、術後の異常を早期に発見し対処する体制を整えることが、ICLレンズ交換後の安心・安全な回復につながります。何か気になる症状や疑問があれば、速やかに担当医に相談してください。
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ICLは一度挿入すれば長期間にわたり高い視力を維持できる一方、万が一の度数ズレや白内障発症にも同じ小切開から柔軟に対応できる、対応力の高い視力矯正法です。それでも「自分に向いているか」「術後に不安はないか」といったご心配があるのはよくわかります。
そんな方には、京都市伏見区のももの木眼科が実施する 来院不要のWEB相談会 をおすすめします。ご自宅からオンラインで、ICLの適応判定方法から手術手技、レンズ交換の流れまで、わかりやすくご説明させていただきます。まずはお気軽にWEB相談会で疑問を解消してください。