
ICLとは角膜を削らず強度近視が矯正できるということで、ここ10年で普及している手術です。WEB上には「ICL最高」 「ICLで世界が変わった」などのポジティブな情報から、「ICLで失明寸前」「ICLは眼科医は絶対に受けない手術」といったネガティブなものもあります。よってどちらが本当かわからず、安全性に不安を抱く人が少なくありません。本記事では、国内導入から10年以上で蓄積された臨床データをもとに ICL の実際の安全性について解説します。
失明の可能性がある眼内炎や緑内障の発生率、角膜への負担、メリット・デメリット、さらにレーシックとの違いや老眼との関係、万一の際にレンズを抜去できる可逆性についても触れ、何が本当のリスクで何が誤解なのかをわかるようにしています。
ICL手術の安全性について
ICLは、角膜を削らずに近視や乱視を矯正できる入替え可能なレンズです。国内導入から 10 年以上が経ち、多くの施設で蓄積されたデータは「視力は長期的に安定」「合併症発生率が極めて低い」ということを示しています。ここでは 失明リスク、目への負担という観点から、その安全性について解説します。
失明の可能性
国内承認されているICLで失明の例はありません。合併症はゼロではありませんが、それらに対しても予防策、対応策があります。
感染症は0.0167%
術後合併症で最も重大な眼内炎は、国内外の統計で約 0.0167 %です。手術当日の完全滅菌と、術後1週間の抗菌点眼・保護メガネを順守すれば、眼内炎を防ぐことができますし、もし眼内炎を発症したとしても適切な処置を受ければ失明することはほとんどありません。
緑内障・白内障が起こりにくい最新レンズ
旧型レンズでは、房水の流れが妨げられ眼圧が急上昇してしまうことがあるという課題がありました。現在主流の hole-ICL は中央に微細な孔を開け、房水の循環を確保しています。よって、術後に緑内障発作を起こすリスクは理論上ほぼゼロ、白内障も「水晶体にレンズが接触しない構造」でほぼ生じなくなっています。
目への負担
角膜を削らない手術である
レーシックは角膜を削るため、知覚神経が切断されドライアイが悪化することがあります。ICLはレンズを虹彩裏に留置するだけなので、角膜構造や涙液バランスがくずれることはありません。術後のドライアイの悪化はほとんどありません。
角膜内皮細胞の減少がほとんどない
角膜の透明性を保つ内皮細胞は加齢で年 0.5 %減少します。ICL術後の減少率は年 0.3 〜 0.4 %と同程度で手術をしなかった場合と変わりません。術前に専用の機械で前房深度と角膜厚を精密測定し、適切なレンズサイズを選べば細胞への長期ダメージはほぼありません。
可逆性がある
万一視力の変化や合併症が生じても、レンズを摘出・交換して元の状態に戻せる点がICLの最大の利点です。この点が手術をしたらもとには戻せないレーシックとは異なります。ICLレンズは非常に柔らかい素材でできているので取り出し時にレンズによって水晶体や角膜を損傷することはありません。
ICLの安全性が低いと思われている理由
SNSなどでICLに対するネガティブ記事が散見される理由
ICLが導入された当初は中央孔のない旧型レンズが使用され、術後の眼圧上昇や白内障、角膜内皮への障害が報告されました。この体験談が古いブログや掲示板に残り、検索上位にとどまり続けています。
またSNSでは「友人が失明しかけた」「ICLは眼科医は絶対受けない」など刺激的な投稿が拡散されやすく、実際より危険が強調される傾向にあります。術後ケアを怠った稀なトラブルや日本で承認されていないICLによる手術の失敗談が多く含まれているのが実情です。
ICLの安全性
現在日本で承認されているhole-ICLは、中央に微細孔を設けて房水の流れを確保し、旧型で課題だった眼圧急上昇や早期白内障を解消しています。世界で200万眼以上に使用され、長期データでは「術後失明例ゼロ」「眼内炎0.0167%」「術後の視力改善」という結果が共通しています。
角膜を削らないためドライアイ悪化はレーシックより少なく、角膜内皮細胞の年間減少率も生理的範囲内です。レンズは必要に応じて摘出・交換でき、将来の白内障手術にも問題なく対応できます。術前検査をしっかり行なって、術後1週間の抗菌点眼とケアをしっかりしていれば、統計的には安全性の高い視力矯正法といえます。
またレーシックやICLを自身で受けている眼科医は実際には多く、私自身も20年ほど前にレーシックを受けていますし、当院の別の医師はICL手術を受けています。術後は現在まで非常に快適に過ごすことができています。
ICL手術で失敗する可能性・確率
ICL手術における「失敗」というと、多くの方が手術中や手術後に重篤な合併症がおきて視力を大きく損なうケースを想像しますが、そういったケースはほとんどありません。ICL手術における「失敗」とは、主に術後に満足できない見え方や追加処置が必要になる状況をいうことが多いです。
まず最も重篤な合併症である眼内炎(細菌感染)の発生率は約0.0167%程度です。もし発症しても早期発見・治療を行えば失明に至ることはまずありません。次に、旧型レンズで問題となった眼圧急上昇や早期白内障ですが、現在主流のEVO hole-ICLでは前述のように起こりません。
「視力が思ったほど出ない」といった機能的な不満の多くは、レンズの度数が合っていない、もしくは乱視軸ズレが原因です。術前検査でレンズ度数とサイズを適切に選べば発生率は0.5%以下に抑えられ、万一起きてもレンズの向き修正や交換で解決できます。角膜内皮細胞減少は年0.3~0.4%と自然減少とほぼ同じで、術後に角膜が混濁して視力を失うリスクは報告されていません。
「夜間のハロー・グレアが気になる」という場合がありますが、これはICL手術後には必ずおこるもので失敗には含まれません。手術前にこの点に関してはしっかり説明がありますが、ほとんどの場合は気にならない程度です。術後のハローグレアが許容できない場合はICL手術は慎重に考えたほうがよいでしょう。
ICL手術のメリット
ICLにはレーシックや眼鏡・コンタクトにはない5つの大きなメリットがあります。
①強度近視でも高精度に矯正
–18D 前後の強度近視や 4.5D までの強度乱視まで対応でき、レーシック適応外の度数でも裸眼 1.0 以上の視力をめざせます。
また近視や乱視が強い場合でも特に手術のリスクが高まるということはありません。
②角膜を削らないのでドライアイが悪化しにくい
角膜に傷を付けないため知覚神経を温存できるので、術後に“目が乾く・かすむ”といった不快感が少ない点が魅力です。
③レンズを取り外せる可逆性がある
稀ですが手術後に近視度数が変化したりした際はレンズを抜去・交換して元の状態に戻せます。不可逆なレーシックに比べ将来の選択肢が広がります。
④長期コストを抑えやすい
ICLの術費は両眼 60~70 万円と高額ですが、10年間1dayコンタクトレンズを使用する場合は同じくらいの費用がかかるので長期的には手術を受けた方が費用が抑えられることになります。
⑤生活の質(QOL)が大幅向上
朝起きた瞬間からクリアな視界が得られ、災害時に眼鏡を失う不安も軽減します。スポーツやアウトドア、長時間 PC 作業でもレンズのくもり・ずれがないため快適だと思います。
ICL手術のデメリット
ICLは優れた近視矯正法ですが、デメリットもあります。メリットだけで決断しないよう、以下の5つのポイントを確認してください。
① 費用が高額
保険適用外で両眼 60〜70 万円前後。長期的にはコンタクト代より安く済む可能性があるとはいえ、一度に大きな出費が必要です。医療ローンや分割払いに対応している施設もあるので相談してみましょう。
② 合併症リスクはゼロではない
眼内炎 0.0167 %、一過性の眼圧上昇、ハロー・グレア現象などが報告されています。発生率はきわめて低いものの、術後 1 週間は抗菌点眼・保護メガネ・運動制限を厳守しなければなりません。
③ 老眼には対応できない
ICLは近視と乱視を矯正する手術です。40 代後半以降は調節力が低下するため、遠近両用メガネや老眼鏡を併用する可能性が高くなります。
④ 適応外となるケースがある
前房深度 2.8 mm 未満、角膜内皮細胞数の不足、閉塞隅角緑内障、重症アトピーなどがある場合は手術ができません。精密検査で判明した場合、別の矯正法を検討する必要があります。
⑤ 強い衝撃には注意が必要
ボクシング・空手・ラグビーなど眼に強打が加わる競技では、乱視用レンズが回転し見え方が崩れる恐れがあります。競技を続ける場合は担当医とリスクと対策を相談してください。
ICL手術の流れ・費用
ICL手術の流れ
1. 院内カウンセリング
メガネやコンタクトレンズの度数、生活スタイルを確認します。明らかに手術適応外の場合はこの時点で終了となります。
2. 術前検査(1−2時間程度)
・視力検査
・各種精密機器によるICL適応検査
検査前はソフトコンタクトレンズ で1週間、ハードで2週間の装用中止が必要です。
検査結果次第では後日再検査になることもあります。
3. 診察、度数・レンズサイズ決定
医師の診察と見え方の希望の最終確認をし、度数を決定します。
4. 手術当日(全所要約1時間・手術は片眼5分程度)
5. 術後フォロー
翌日・3日目・10日目・1か月検診が標準です。抗菌・抗炎症点眼を1か月継続し、1週間は保護眼鏡を装用します。
その後は目の状態次第で受診間隔を設定します。
上記の検査やアフターフォローをしっかりと行っている施設を選択するとよいでしょう。度数ズレがおきたり、感染症の早期発見が遅れるリスクを低くできます。
ICL手術の費用
ICLはレンズそのものが高額であるため、両眼で60−70万円程度の場合がほとんどです。両眼40万円〜という広告もありますが、日本で承認されていないレンズを使用していたりする場合もあるので慎重に検討したほうがよいでしょう。広告では安かったのに術前検査にいってみたら、いろんな条件がついて高い値段を提示されるということもあるようですので、料金形態が明快な施設に受診するのが望ましいです。
安全性の高いICL手術を受けるには、信頼できる眼科を見つけよう
ICLを安全に受ける第一歩は、信頼できる眼科選びです。以下に簡単に必須ポイントをまとめます。
①ICL認定施設かどうか
スター社が定めるICL認定施設は、前房OCTや手術用ガイダンス装置など必須機器を備え、厳しい実績基準を設定しています。スター社の公式サイトやICL研究会のHPなどで名簿を確認しましょう。
②ICL認定医が執刀するか
認定医は専門研修と症例審査をクリアした眼科専門医です。「執刀医=認定医」「手術する医師と術後診察をする医師が同じ」を明示しているクリニックが安心です。
③術前検査の充実度
CASIA 2などレンズサイズの決定に必須の検査機器があるかどうか。国家資格を持つ視能訓練士による視力検査が行われるかどうかを確認しましょう。
ICL手術のリスクが心配な方は、京都市伏見区のももの木眼科にご相談ください

ICLの仕組みや安全性、費用、老眼など、記事だけでは解決しきれない疑問が残ると思います。京都市伏見区にあるももの木眼科では、ICL無料WEB相談会を実施しています。事前の適応チェックや想定費用、手術後の生活イメージまで、画面越しに丁寧にご説明しますので、遠方の方や忙しい方でも安心してご利用いただけます。
「まずは話を聞いてみたい」という段階で予約していただいて大丈夫なものです。ICLに関する疑問や不安を解消するお手伝いできるかと思います。相談会後に院内検査を受けるかどうかはご自身で自由に決めていただけますので、ICL手術について気になる方はお気軽にICL無料WEB相談会をご予約ください。