「ICL(眼内コンタクトレンズ)」は、視力矯正の新たな選択肢として注目されている治療です。レーシックと比較される方が多い治療方法ですが、大きな違いが元に戻すことができるという点です。このコラムでは、患者さんからよく聞かれる「ICLは何年もつのか?」「レンズの取り外しは可能なのか?」といった疑問にお答えします。
ICLとは

ICLとは、簡単にいうと目の中にレンズを入れてしまうことで視力を矯正するという手術です。眼内コンタクトレンズと呼ばれることもありますが、実際にはコンタクトレンズとは異なり、ICLという名前の眼内レンズを目の水晶体と虹彩という場所の間に固定する手術です。
近視矯正の手術といえば、レーシックが有名です。レーシックは角膜を削る手術のため、一度やると元に戻すことができない、あまりにも近視が強いと角膜を削る量が多くなりすぎて手術ができないなどのデメリットがあります。
それに対してICLはレンズを取り出すことができるため、もとの状態に戻すことができ、強度の近視にも問題なく対応できるというメリットがあります。
ICLは何年もつ?
ICLは一般的に50年程度は使用できるといわれています。
もし、20歳で入れたとしても70歳くらいまでは使用できる計算になります。
では、70歳になったら必ずICLを入れ替えないといけないのか?というとそんなことはありません。50年という年数は少なめに見積もられているため、実際には50年経ってもそのまま機能を保っている可能性は高いです。
また、基本的には、メンテナンスや交換の必要はありません。しかし、レンズを取り外しをしなければならない場合もあるため、定期的な検査で異常がないか確認することをおすすめします。
ICLのレンズは取り外せる
ICLレンズはを取り外すことが可能です。
前述のようにICLレンズの寿命により、取り外しをしなければならないケースはほとんどありません。
しかし、非常に少ないですが、以下のようなケースではレンズの取り外しが必要になります。
レンズのサイズが合わない場合
ICLレンズが大きすぎる、もしくは小さすぎることで眼圧という目の圧力が高くなってしまったり、水晶体という部分にICLレンズが当たってしまうことがあります。
その場合はICLレンズを取り出して、適切なサイズのICLレンズに入れ替える必要があります。
当院ではICLレンズのサイズを決定する際、CASIA2という高機能の検査機器を使用しています。この検査機器を使いICLレンズのサイズ決定をした場合には、ICLレンズが合わないことによる入れ替えは、ほぼ必要ありません。
そのため、CASIA2などの高機能な機械が揃っている施設で手術を受けることが推奨されます。
ICL手術後に近視が進行した場合
ICL手術後に近視が進行する場合があります。少しであれば問題ありませんが、大幅に近視が進行した場合は、度数を強くしたICLレンズに入れ替える必要があります。
白内障が発症した場合
加齢により白内障が発症した場合は白内障手術が必要になります。
この場合は白内障手術時にICLレンズを取り出し、白内障手術で使用する眼内レンズに入れ替えることになります。白内障手術で使用する眼内レンズも適切な度数を選択することでICLレンズを取り出しても、もとの近視の状態にもどってしまうことはありません。
ICL手術による感染症による炎症起きた場合
非常に頻度は少ないですが、0.0167%程度の確率で起こるといわれています。
この場合はICLレンズを取り出して、眼内を洗浄、抗菌薬を投与することが必要になることがあります。
ICLで使用するレンズの種類
EVO+ICLレンズ
アメリカSTAAR社のICLレンズです。
当院では、こちらのレンズを扱っております。
現状、STAAR社のICLレンズがおすすめです。
理由は、日本で薬事承認を受けているICLレンズはこのSTAAR社のものだけであること、自社のICLレンズを使用する施設、眼科医にしっかりとした資格・基準を設けているためです。
STAAR社のICLレンズの特徴
STAAR社のICLレンズは世界で200万例以上の実績があります。
日本でICL手術を受けたという方のほとんどがこちらのレンズを使用されているといってよいほどのシェアを持っています。
以前は、ICLのように虹彩と水晶体の間にレンズを固定する手術の場合、それによって引き起こされる白内障や緑内障発作が術後の合併症として問題となっていました。そのため手術の際に健康な虹彩に穴をあけるという処置が必要となり、眼科医の中でも(私も含め)否定的な立場の方が多かった印象です。
しかし、2014年にSTAAR社のhole-ICLという、レンズに水が通るための穴があいたタイプのICLレンズが発売されました。このhole-ICLは、術後の白内障や緑内障の合併症のリスクが無いといっていいものです。このhole-ICLをきっかけにICL手術というものが、日本でも目に見えて増えていき、認知されていきました。
私個人としても、hole-ICLの実績を見て、強度の近視で長年悩んでいる方にはICL手術は非常によい手術である、という考えに変わり今にいたります。
また、STARR社は多数のICL手術の実績のあるICL研究会のサポートを受け、ICL認定医制度を運営しています。
このICL認定医は、専門的な訓練を受け、定められた基準を全てクリアした眼科専門医、眼科施設のみが取得できるものです。
プレミアムICLPro
イギリスEyeOL社のICLレンズです。
こちらのレンズは、当院では取り扱っておりません。
日本で薬事承認がおりておらず、日本人での実績が少ないためです。
日本では医師免許の権限が強いため、医師が個人輸入して使用することができますので、採用しているクリニックもあります。
特徴
従来のICLレンズの夜間に瞳孔が大きく開きすぎる場合は見えにくいという問題を解消できる機能をもったICLレンズです。より大きい瞳孔径にまで対応できるプレミアムICLPro+というものもあります。
また、遠視や老眼に対応できる製品もあります。
当院ではICLの術前検査の際に、暗所での瞳孔径を測定して夜間に瞳孔が開き、見えにくくなる可能性があるかどうか必ずチェックするようにしています。
アイクリルレンズ
スイスWEYEZER社のICLレンズです。
こちらのレンズは、当院では取り扱っておりません。
日本で薬事承認がおりておらず、日本人での実績が少ないためです。
特徴
ハイブリッド・ハイドロ・アクリルという素材が使用されており、汚れが吸着しにくいといわれています。レンズの光学径(レンズとしての機能のある範囲)が小さいためハローグレアが生じやすかったり、夜間の見えにくさが生じやすかったりというデメリットがあります。
ICL手術の内容
<1>消毒
まずは目の周りと中をしっかりと消毒します。
ICLは目の中にレンズを挿入する手術なので、目の中にばい菌が入らないための非常に大事な部分です。
<2>麻酔
手術前の準備の段階と消毒後に表面麻酔の目薬を行います。
<3>ポートの作成
ICLのレンズを入れるための入口と、器具を挿入するための入口を角膜(黒目)の端に作ります。大きい方でも3mmに満たない小さな入口です。
<4>薬剤の注入
この入口から、痛みをとるための目の中に追加で麻酔を行います。
またICLレンズを挿入するために前房という目の中の空間を膨らませるための粘弾性物質という薬剤を注入します。
<5>ICLレンズの挿入
メインの入口からICLレンズを挿入します。目の中でしっかりICLレンズが広がったことを確認します。
<6>ICLレンズの固定
ICLレンズを虹彩と水晶体の間に固定します。この際に虹彩という茶色めの部分を触ることになるので、ここで鈍い痛みを感じる方もおられます。強度近視の方はこの痛みを感じる場合が多いです。
<7>レンズの方向修正(乱視用レンズの場合のみ)
乱視を矯正するためのICLレンズの場合、乱視を打ち消すようにレンズの向きを修正する必要があります。当院では手術中に乱視軸を正確に合わせることができるVERION(ベリオン)という高性能な手術装置を導入しており、これにより正確に乱視軸を合わせることができます。
<8>目の中の洗浄
最後に目の中を専用の機械で洗浄して、薬剤などを全て洗い流し目の中の水と同じ成分の水に置き換えます。
<9>ポートの閉鎖
手術の最初に作った入口が閉鎖していることを確認し、再び消毒をして手術を終了します。
ICL手術の安全性
現状のhole-ICLレンズが日本で承認されたのが10年ほど前(2014年)からなので比較的新しい手術と言えるでしょう。そのため、不安を感じる方も多いと思います。
しかしながら、実は目の中にレンズを入れて、留置するという技術自体には50年以上の歴史があります。それが白内障手術です。白内障手術は濁った水晶体を除去して眼内レンズを目の中に入れて留置する手術です。
それに対してICLは水晶体を残したまま、水晶体の前にレンズを入れて留置するという手術なので、かなり似た手術になります。
レンズを中に入れることに関しては、長い歴史のある白内障手術で安全性が確認されているため、新しい手術であるICL手術についても同様の安全性が確保できると考えられています。
ICL手術のリスク
ICLは安全性の高い手術ではありますが、やはりどんな手術でも一定のリスクはあります。
レンズのサイズ不適合
レンズの入れ替えが必要になりますが、当院で採用しているCASIA2という適正なICLのサイズを正確に予測できる検査機器があればリスクは大幅に軽減できます。
レンズの回転(乱視用レンズの場合のみ)
乱視用のレンズは乱視を打ち消す方向に固定する必要がありますが、それが回転してしまい軸がずれてしまうことがあります。その場合はレンズの方向を修正する手術が必要になりますが、レンズを取り出さないといけない訳ではないので負担は少ないです。
術後の感染症
最も気をつけなければならないリスクが術後の感染症です。確率は0.0167%と高くはありませんが、もし生じた場合はICLを一旦とりだして目の中を洗浄したり、専用の手術が必要になることもあります。
特に術後1週間は専用の目薬を使用し、目が不潔にならないように十分にケアする必要があります。逆に言えば、術後のケアができていればこのような危険な合併症は防ぐことができます。
ICLをするか悩んでいる方は、京都市伏見区のももの木眼科にご相談ください

ICL手術についてはホームページやブログで記載はしていますが、人によって異なる部分が多く、どうしても一般的な内容になってしまいます。
個人的にICL手術を受けるのであれば、術前検査の機械設備が整っている施設で、かつ、同じく目の中の手術である白内障の手術を多く手がけている施設で受けていただくのがよいと考えています。
ももの木眼科では、多くの白内障手術を行っており、かつ安全で正確な手術を行うために大病院レベルの検査・手術設備が整っております。
また、ひとりひとりの患者様に合わせた説明を行い、ICLに向いていない患者様に無理に手術を勧めることはございません。
当院では、来院不要のweb説明会を行っております。
自分の場合はどうだろう?と考えておられる方やICL手術を受けるか悩んでいる方は、京都市伏見区のももの木眼科にご相談ください。